24皿目 カンニング岡本

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 太陽の光が木々の間から射し込み、草や木の葉の緑をより一層鮮やかにしていた。  太陽の光を全身で受け、伸び伸びと育つ草木の丁度中央部。そこは不自然に葉が潰れ、無惨に折れた木の枝が散らばり、黒く変色した場所があった。鮮やかな緑の中に主張する黒。  由貴は昨日の卓也の姿を思い出したのか、眉間に皺を寄せて、そこから視線を外した。  竜は由貴の様子を横目で見た後、ゆっくりとその場所へと足を進めた。暫くの間、竜は黙って変色した場所を眺めていたが、スッと右足を前に出すと、上にかかっている木の枝や草を掃うように動かした。 「ちょ、おい。竜、何やってんだよ」  突然の竜の行動に由貴は目を丸くすると、慌てて傍へと駆け寄った。由貴が竜の傍へと来ると、竜は右足を元の位置に戻し、じっと卓也が倒れていた場所を見下ろした。由貴は竜が何をしようとしているのか、まったく見当がつかず、不思議そうな顔をして竜を見ていた。 「なあ、由貴」 「なんだよ?」 「お前さっき卓也を見たとき、違和感があったっつってただろ」 「ああ、言ったけど。それがどうかしたかよ」  竜は由貴を一瞥した後、また視線を下に向けた。由貴は竜の横顔をジッと見ている。沈黙がその場を支配した。  一陣の風が吹く。木の葉が揺れる。 「違和感ってのは多分、この血痕のことだろ」 「血痕? どういうことだよ」  竜は淡々とした口調で沈黙を裂くと、右手に持っていた懐中電灯で足元に広がる卓也の血痕を指した。由貴は竜の言葉に首を傾げた後、足元へと視線を向けた。  視線の先には既に乾いた血が草にこびり付いていた。
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