24皿目 カンニング岡本

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「昨日俺らが見た卓也の服にはかなりの量の血がついていた。青い服のほとんどが色を変えるくらいにな」  由貴は竜の言葉を聞き逃さないように、珍しく真剣な顔をして竜の話に耳を傾けていた。竜は横目で由貴を一瞥した後、視線を足元に戻して話を続けた。 「なのに、卓也が倒れていたこの場所に残った血痕は明らかに、少ねえ」 「少ない?」 「あれだけの血がでてるっつーことは、卓也はかなりの怪我をしてたって考えるのが妥当だろ……それなら、この場所にもっと大きい血溜りができてるはず。つか、できてねえとおかしいだろ」 「そう言われれば、そうだな」  竜の話に由貴は納得するように頷くと、卓也の血痕を見つめた。  昨夜、竜と由貴が、今立っている場所の上から卓也を見下ろしたとき、懐中電灯の明りしかない中でも、卓也の衣服や身体についていた血の量はひどいものであることが見て取れた。かなり酷い怪我をしていると、誰が見ても考えたであろう。それなのに、残った血痕はうっすらと卓也の身体をかたどるかのように、草の色を変えているだけであった。 「……でも、違和感ってなんかそれじゃねえ気がするんだよな……もっと、こう、 パッと見て気付くっつーか」  由貴は暫く竜の言葉を考えていたが、どうもまだ何かに引っかかるらしく、眉間に皺を寄せると、腕を組んで首を傾げた。竜はそんな由貴の様子を横目で見た。 「もう一つ」 「え?」  竜は視線を足元へと戻すと、一言呟いた。由貴は竜の言葉に顔を上げると、竜の方へと視線を移した。 「不自然なことなら、もう一つある」 「……なんだよ」  竜は右側に視線を向けると、ゆっくりと顔をあげて、昨夜自分達がいた場所を見上げた。由貴は竜の視線の先を辿り、顔をあげた。
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