24皿目 カンニング岡本

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「卓也を包んでいたビニールシートが母親と父親の前で捲られたとき、卓也は仰向けに寝かされてた。そのとき卓也の服や身体を見る限り、背中ほどの血痕がなかったんだよ」 「それのどこが不自然なんだよ? つか、竜、お前どんだけ目敏いの。俺そこまで見てねえし」  由貴のふざけた言葉に竜は鋭い視線を向けると、由貴は肩をすくめた。 「不自然すぎるだろ。事故で崖から落ちたっつーのに、なんで背中にあんなに大量の血痕があったんだ? 崖から落ちてできた傷なら全身に打撲や擦り傷が満遍なくあるもんじゃねえの。なんで背中に傷が偏ってんだよ」 「…………」 「残った血の量に、不自然な怪我の仕方、背中に偏ってできた血痕……卓也がこの上から落ちて死んだって断言するには早いと思うけどな……他で殺されて、この上から捨てられた、その可能性もないわけではねえだろ」  竜は言い終わると、ジッと傾斜の上を見上げた。傾斜の途中には、所々、卓也の血痕らしきものが残っている。由貴は竜の言葉に納得したように頷くと、ぽんっと竜の肩に手を置いた。 「なんだよ」 「竜、お前すげえな! マジでどこぞの少年探偵みてえだし! いやー、前のやつといい、何その頭の中、どうなってんの! どんだけ回転速えの! 期末合計何点だった!?」 「お前が平均より出来が悪いだけだろ」 「失礼しちゃうわね! 全教科平均以上ありましたからー! 残念!」 「カンニングご苦労」 「してねえよ!!」  先ほどまでの真面目な雰囲気はどこへ行ったのか。由貴は森に響くほど、声を荒げて不名誉な疑いを否定するが、竜はどこか疑わしい目で由貴を見ていた。  まだブツブツと文句を言っている由貴を竜は相手にせず、傾斜の上を見上げた後、由貴に視線を移した。 「上がってみるか」 「異議なーし」
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