25皿目 忘れられたアイツ

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 由貴と竜は一旦、卓也が倒れていた場所を離れると、清治が落とした懐中電灯を拾った場所まで引き返した。  二人は上を見上げて、ここからなら登れると判断すると、木の根や岩などに足を掛けて、昨日居た場所まで登っていった。 「よっと!……おおー、やっぱ昨日見た風景とは大分ちげえな」  由貴は木の幹にかけた手に力を込めて、傾斜から身体を引きずり上げた。立ち上がって、ジーンズや服についた土を掃いながら辺りを見渡したが、昨夜見た光景とはまったく違った光景がそこには広がっており、由貴は瞬きを数回繰り返す。  由貴に続いて竜も登り切ると、由貴の隣に立ち、服についた汚れを掃った。 「行くぞ」 「ちょ、待てって」  きょろきょろと辺りを見渡している由貴を置いて、竜はさっきの場所を見下ろせる場所へと足を進めた。由貴は慌ててその後を追う。  木々の間から射し込む太陽の光が初めよりも弱まっていた。  竜と由貴は昨夜卓也を見下ろした場所へ到着すると、同じ場所に立ち、視線を下に向けた。視線の先には先ほどまでいた場所があった。由貴は顔をあげると、隣で下を見下ろしている竜に視線を向けた。 「なあ、竜。もし竜の言う通り、卓也が他の場所で殺されて、ここから落とされたってことだったら、この辺りに卓也の血痕が残ってるはずだよな?」 「そういうことになるな」  竜は由貴と視線を合わせると小さく頷いた。その後、二人は何も言わずに視線を回りに廻らせると、その場を離れた。  竜はしゃがみ込んで傾斜の周辺を調べ、由貴は竜から少し離れた場所を、腰を屈めながら調べ始めた。
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