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暫くの間、黙々と周辺を調べていたが、何かが見つかるわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていった。
「んだよー、なんもでてこねえし……」
由貴は木に寄りかかりながら座りこむと、頬を伝う汗を服の袖で拭った。最初に探していた場所から、かなり離れた場所に二人は居た。竜は由貴の近くに立つと、ジーンズのポケットに手を伸ばして、携帯電話を取り出した。
携帯の小さなディスプレイに表示されるアナログの時計の針が丁度、縦一直線に並んだところであった。竜は時間を確認すると、携帯電話を閉じて、ポケットに仕舞った。
「何時?」
「6時、そろそろ帰るか」
「そうだな」
由貴は腰を上げて立ち上がると、腕を真っ直ぐ上げて、伸びをした。竜は由貴を一瞥した後、ポケットに両手を入れて辺りを見渡した。
太陽はすっかり傾いてしまい、森へと射し込む光の量は大幅に減少していた。
「結局なんも見つかんねえし」
やっぱ卓也はあそこから落ちたんかねーと由貴が唇を尖らせながら呟き、竜はその言葉を聞き流しながら、周りを眺めていた。
由貴はもどかしさを表すように、短い黒髪を乱暴に掻き混ぜると、竜に声をかけた。
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