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「由貴君に、藤嶋君……? ど、どうしたのその格好!?」
由貴と竜は睨み合いながら、広場へと足を踏み入れると、タイミングよく広場の入り口付近にいた清治に出会った。清治は由貴と竜の姿を視界に入れると、目を見開いて、慌てて二人の元に駆け寄ってきた。
「え、あ、ちょっと、ドジっちゃって、転んでしまいまして……」
さすがに昨夜の森で迷ってました、と言うことはできず、由貴が頬を引きつらせて笑いながら呟いた。清治は一瞬由貴に疑うような視線を向けたが、すぐに視線を外して、呆れたようにやれやれと溜息をついた。竜は視線を下に向け、居心地悪そうにしていた。
「まったく……元気があるのはいいことだけど、ほどほどにね」
清治はそう言って眉を下げて、柔らかく笑うと由貴と竜に顔や腕を洗ってくるように指示して、水道を指差した。由貴と竜の二人は申し訳無さそうな顔をして、トボトボと、前に子供達と水遊びをした水道へと足を進めた。清治は小さく笑いながら二人の背中を見送ると、二人のためにタオルを借りに近くの出店へと近づいていった。
「ふうー、スッキリ!」
由貴は清治に渡されたタオルを首に掛けて、出店の並ぶ広場を歩いていた。その隣を歩いていた竜は、すっかり森で迷ったことを忘れている由貴を呆れたように見た後、渡されたタオルで頬を伝う水を拭った。
服についた汚れはまだいくらか残っているが、腕や頬の傷や汚れはすっかり洗い流されていた。
「腹減ったなー、たこ焼きもいいけど、焼そばも捨て難いし。竜は何買うー? あ、もしかして林檎飴とかそういう、僕実は甘党なの、っていう無邪気アピール狙いですか!?」
「黙れ」
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