26皿目 実は口の中軽く火傷しました。

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「あれ? 誠太くん、さっきまでいっしょにいたと思ったんだけどなあ」 「いついなくなったんだろ?」 「誠太くんって存在うすいからたまにいっしょに居ても気付かないしねー」 「きっと今日は卓也くんいないから、もう帰っちゃったんだよ」  意外と毒舌な子供達を由貴は苦笑いを浮かべて見ていた。竜は最後の紀美子が言った「今日は卓也くんいない」という言葉に眉を顰めていた。  卓也は昨日亡くなったはずであり、「今日は」というのはおかしい。恐らく、子供達にはまだ卓也の死は知らされていないのだろう。  そうして子供達をぼんやりと見下ろしている竜へ、横から何かが突撃してきた。竜は突然の衝撃に横に倒れそうになったが、なんとか足に力を入れて踏みとどまった。 「竜さまーー!! もう、探したんだからー! 今日一緒にお祭りまわりましょって約束したじゃないですかー!」  奈緒寂しかった!と竜に抱きついて見上げてくる奈緒に、竜は心底面倒くさそうな表情を浮かべた。由貴と壱也達はその光景をおもしろそうに眺めている。  竜は奈緒の肩に手を置いて、離れるように押し返した。意外とすんなりと竜から離れた奈緒は、竜の前に立つと、にっこりと微笑んで腕を広げた。 「竜様のために着物着てきちゃいました。奈緒、竜様に少しでも可愛いって思ってもらいたくってえ。え? 可愛いって? 抱きしめたいくらいに? もうやだー竜様ったらー!」  一人で盛り上がっている奈緒から竜は視線を逸らすと、げんなりといった様子で溜息をついた。由貴は竜の隣に立つと、ぽんっと肩に手を置いた。 「ドラゴンフェロモン絶好調だな」 「…………」
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