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「竜様ー、はい、アーン」
「いらねえっつってんだろ」
奈緒は焼きそばのパックを左手で持ち、右手にもった割り箸で焼きそばを取ると、竜の口元近くまで持っていく。竜はもう放置することに限界が来たのか、顔を背けながら不機嫌そうな声を出した。奈緒は竜がやっと反応を返してくれたことに喜び、嬉しそうに笑いながら、止めようとはしなかった。
「もう、竜様ったら照れちゃってえー」
「照れてねえよ」
「そんなそっけないところも、奈緒、ダ・イ・ス・キ!」
言っちゃったー、と恥ずかしそうに照れている奈緒に竜はうんざりといった表情を浮かべた。あの時、自分はどうしてこの女を助けたりなどしたのだろう、と竜は心底前日の行動を悔やんだ。
由貴はそんな竜の疲れた様子を横目で見て、苦笑いを浮かべると、持っていた偽物の銃を構えて、標的に狙いを定めた。片目を瞑って、真剣な表情を浮かべる。
パン!
「惜しいっ! 兄ちゃん、残念だったねー」
「んだよー! おっちゃん、もう一回!」
由貴は悔しそうに右手で髪を掻き混ぜると、人差し指を立てた。出店の主人は人の良さそうな笑みを浮かべると、もう一セット射的用の偽物の弾を由貴の前に差し出した。
由貴は台に置いていた財布から200円取り出すと、店の主人に手渡した。
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