27皿目 年上キラー

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「お前まだやんの?」 「もーちろんよ! まだ目当てのやつ取ってねえからな!」  竜は隣で一人で盛り上がり始めた奈緒を放置して、由貴の傍へと寄ると、銃を構えて、真剣な顔をしている由貴を見下ろした。 「二度あることは三度あるってね!」 「それ四回目だろ、つか、使い方おかしいだろ」  おかしな怪獣のキーホルダー、ミニカー、やや不細工なクマのぬいぐるみ。由貴のそばには獲得したものがいくつか転がっていた。竜はそれを見た後、呆れたような顔をして由貴に声を掛けた。 「どれ取るつもりなんだよ」 「え? ああ、あの白いネコがついてるキーホルダー」  竜は由貴の言葉に、店の奥に並んでいる品の中に、小さな白いネコの人形がついたキーホルダーに視線を向けた。やたら目の大きなそのネコは、どうみても由貴が欲しがりそうなものとは思えなかった。由貴は竜が眉を顰めているのを見ると、にんまりと笑って口を開いた。 「あ、勘違いすんなよー。自分でつけようと思ってるわけじゃねえからな」  由貴の言葉に竜はさらに怪訝そうな表情を浮かべた。由貴は竜の表情に笑うと、顔を前に戻し、銃を構えた。 「あのネコ、なんか『ふぁみれす』にいたネコと似てねえ? だからさ、アレ取って裕斗にやろうと思って。から揚げ貰ったお返しにさ」  男の子が貰って喜びそうなものじゃねえけどな、と由貴は笑いながら言うと、竜は視線を由貴からまた棚に並んでいる白ネコのキーホルダーに向けた。 『ふぁみれす』の妖怪こと店主の江島菊乃いわく、裕斗は毎日、あの白いネコに餌をやって可愛がっているらしい。由貴は男の子が貰って喜びそうなものではない、と言っているが、裕斗は由貴からもらったキーホルダーを満面の笑みを浮かべて喜ぶだろう。  竜はすっかり、裕斗を弟のように可愛がっている由貴を呆れたように見ながら、口元を緩めた。
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