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車はガタガタと車体を揺らしながら走る。
由貴は隣でぼんやりと外を眺めている竜を一瞥した後、運転席の清治を見るとミラー越しに清治と目が合った。
由貴が気まずそうに視線を逸らすと、清治はにこりと笑った。
「由貴君と会うのは、栄治の葬式以来かな。まあ、あの時由貴くんは2歳だったから覚えてないと思うけど」
「あ、はい、あんまはっきりとは覚えてないです」
「あれから15年も経つからねえ。由貴君もすっかり大きくなって、目元なんか栄治そっくりだよ」
懐かしそうな目で見てくる清治に由貴は少し照れくさそうに笑った。
自分が物心つく頃には亡くなっていた父親の栄治に似ているといわれることが嬉しいような、照れくさいような複雑な気持ちなのだろう。
竜はそんな由貴と清治のほのぼのとした会話を聞きながら、ぼんやりと外を見ていた。
走っても走っても、同じ景色が続いていた。
視界に入る色は、ほとんどが青と緑を占めている。竜は、目に良さそうだな、とありきたりなことを思いながら欠伸を噛みころした。
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