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「どうかした?」
「…………」
「竜?」
竜は由貴を一瞥した後、足元に視線を向けた。由貴は不思議そうな顔をしながら、竜の視線の先を追う。不自然に折れた草。激しく踏み荒らされた跡。
竜は、不可解そうな顔をして足元を見つめている由貴に視線を向けると、左手でもっていた懐中電灯で足元を照らしながら、口を開いた。
「なんでここだけこんなに荒らされてんだ?」
「え? あ、ああ……そう言われれば……」
由貴は顔を上げて竜を見ると、竜は足元から池に浮いている小さな背中へと視線を向けていた。由貴も池へと視線を移す。
暗闇に慣れてきた視界にぼんやりと映る小さな背中。
「……あのこじゃわからん、か……今度は一体誰なんだよ……」
由貴は顔を顰めながら呟く。何故か耳から離れない子供の歌声。
あのこは誰だ?
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