30皿目 かみついちゃうゾ

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「どうして……」  由貴の隣に立っていた清治は左手で自らの目元を覆うと、辛そうに呟いた。竜は誠太の亡骸に視線を向けた後、それを囲むように立っている村人達に視線をめぐらせた。  村長や省吾など、一様に顔を顰めて苦々しい表情を浮かべているが、特に慌てる様子もなく、ただ誠太を見下ろしていた。 「恐ろしいことじゃ、きつ―――」 「狐様の仕業ってやつですか、これも」  村長の言葉を遮って竜が淡々とした声で呟いた。村長は眉間に皺を寄せて、竜を睨み付けた。竜はゆっくりと瞬きをすると、村長を睨み返した。いや、睨み返したというのは間違いであろう。竜はただぼんやりと村長を見ただけである。 「ちょっと、藤嶋くん」  やけにピリピリとした様子に清治は慌てて竜と村長の間に入った。  竜は視線を降ろすと、めんどくさそうに溜息をつく。由貴はその隣で苦笑いを浮かべていた。村長は苛々とした表情を浮かべて、口を開いた。 「よそ者が生意気いいおって……ったく、おい。省吾、その子供を運ぶぞ」 「あ、はい、村長」  村長は清治の後ろで気だるそうに立っている竜を睨んだ後、誠太の傍にいた省吾に命令してその場を後にした。  省吾は持ってきていた青いビニールシートで誠太を包んで抱え上げると、村長の後をついていった。
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