32皿目 確かに食べましたけども

3/5
前へ
/248ページ
次へ
「おはよーございまーす」 「……おはようございます」 「え、あ、おはよ。由貴くんに藤嶋くん……朝ご飯ならもう用意してあるから」  着替えをすました由貴と竜は階段を降りると、玄関近くで電話をしていた清治に声をかけた。  清治は二人に気が付くと、一瞬驚いたように目を見開き、二人に笑顔を向けながら受話器を持っていない左手で居間を指差した。  由貴と竜は返事をすると、居間へと足を運んで行った。  16:00。 「雨やまねえなー……」  由貴は居間から縁側を見ると、残念そうな声を出した。  朝から降り続けている雨はまったく勢いを弱めず、激しく地面を叩いていた。  由貴の声に、竜は居間のちゃぶ台に頬杖をついて、テレビから視線を外に向けると、すぐにまたテレビに視線を戻した。  最新型のテレビの画面にはニュース番組が映し出されており、中年の男性と20代の女性が今日起こった政治変動などを真剣な表情で伝えていた。 「この様子じゃ、やっぱ祭り中止だよな」 「だろうな」 「外にも出られねえし、テレビもおもしろそーなのやってねえし……つまんねえ」  視線を外からテレビに戻した由貴は胡坐をかいたまま、ちゃぶ台に置いてあるテレビのリモコンに手を伸ばすと、チャンネルを何度も変えた。  しかし、どこも同じような内容の番組しか映しておらず、結局同じチャンネルにするとリモコンから手を放した。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4384人が本棚に入れています
本棚に追加