33皿目 焦りまくりまクリスティ

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 17:00。  空にどんよりと黒い雲がかかり、外を薄暗く変えていた。  雲から降りてくる雨は地面を激しく叩いている。道には水溜りがあちこちにでき、水溜りのない面積よりもある面積のほうが大きくなっていた。  バシャ、バシャ。  雨の激しく降る音の中に、二人分の地面を走る足音が混ざる。  由貴と竜は傘をさしているが、濡れることも気にせずがむしゃらに走っているため、服やジーンズは水を含んでいた。ジーンズの裾やスニーカーは水溜りから跳ねた泥水で色を変えていた。 「清治さん!!」 「ゆ、由貴君!? 藤嶋君も……どうしてここに……」  由貴は雨で視界が霞む中、ぼんやりと見えた清治の姿に声を張って名前を呼んだ。  清治は由貴の声に驚いた顔をして振り返ると、由貴は余裕のない顔をして清治に詰め寄った。竜は由貴の後ろで立ち止まり、二人の姿を息を整えながら見ていた。清治の周りには何人かの村の男達が合羽を着て立っていた。 「どういうことなんすか!? 何で、黙って……」 「…………」  清治は由貴の切羽詰まった様子に視線を下に逸らした。  由貴は傘を持っていない左手で清治の肩を掴んで自分の方へ引き寄せた。竜は鋭い視線を清治に向けると、頬を伝う水滴を左手で拭った。  由貴は顔を泣きそうに歪めると、口を開いた。 「本当なんすか!? ……いなくなったって……裕斗が、裕斗がいなくなったって本当なんですか!?」 「…………」  由貴の言葉に清治は何も言わずに、視線を由貴へと向けた。 「どうなんだよ!」  黙りこんだ清治に由貴は言葉遣いが元に戻っていた。  由貴が清治の肩を掴んだ手に力を込めると、清治は目を伏せて、こくりと頷いた。
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