35皿目 抱っこちゃん

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「シリアスになっても仕方ねえだろ。この天気じゃ探しに行けねえし」 「でも、こう、なんか。あんじゃん! 悲しみにふけってる感じとかさ……帰ってそうそう焼きそば食うのはどうよ?」 「腹減ってんだからしょうがねえだろ。じゃあ、お前は食わねえのかよ」 「いや、食べますけどもー……」  由貴は竜の言葉に不服そうな表情を浮かべながら、しぶしぶといった様子で皿に手を伸ばした。竜は横目でその様子を見ると、手に持っていたグラスを机の上に置いて、また黙々と食べ始めた。  静かな部屋の中、竜と由貴は黙り込んだまま焼きそばを食べるというなんとも不思議な光景があった。 「いや、やっぱおかしいって!! なんかもっとあんじゃん! 一体なんで裕斗が……とか語ろうよ!」 「知らねえよ。食いながら喋んな。きたねえ」 「ひでえ! なんなんだよ! 落ち込んでる親友に優しい言葉をかけるとか、そういうあったかい心が竜にはねえのかよ!?」 「黙れよ。つか、お前のほうが落ち込んでるようには見えねえけどな」  竜の言葉に由貴は、確かに……と黙り込んだ。由貴は先ほどまで清治に冷たい態度をとったり、寡黙になったりして落ち込んでいる様子を見せ付けていたのに、いつの間にかいつもと同じペースでベラベラ喋っていた。  竜は由貴を一瞥した後、最後の一口を口に入れた。口を動かしながら、お箸をお盆の上におくとグラスに入っていた麦茶と一緒に焼きそばを胃へと流し込んだ。  先に食べ終わった竜は、右手に持ったバスタオルで髪を拭きつつ、着替えの服を取り出すために部屋の端においてあった鞄の傍へと移動した。  由貴はそんな竜の様子に不服そうな顔をしつつ、お箸を動かして、焼きそばを口に運ぶ。
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