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「竜は裕斗が心配じゃねえのかよー……」
「心配してるつもりだけど」
「全然見えねえーよ」
ごそごそと鞄から着替えを取り出すと、ポケットに入っていた携帯を取り出して充電器に差し込む竜の背中を由貴は、じとりと睨みながら、口を尖らせてまるで拗ねているように喋った。
竜は由貴を振り返ることなく、淡々と自分の用事をすませていく。
由貴はふてくされて、左手で頬杖をつきながら右手に持ったお箸で残った焼きそばを食べる気がないのか、ぐるぐるとかき混ぜた。
「なんで、そんなみんな冷静なんだよ……」
「お前が一人であたふたしてるだけだろ」
竜は肩にバスタオルをかけると、右手に着替えを持ち、振り返って由貴へと視線を移した。
「どうせ夜は探しに行くのは無理ってわかってんだったら焦っても仕方ないだろ」
「そりゃそうだけどさー……」
「暗い態度がうぜえんだよ」
「ちょ、竜、それはあんまりだろ!!」
風呂入ってくるわ、と立ち上がった竜に由貴はさすがに怒ったのか、持っていたお箸を机の上に乱暴に置いて竜を睨んだ。
竜は大して気にも留めていないのか、いつもの無愛想な顔で由貴を見下ろして、口を開いた。
「ぐちぐち落ち込んでる暇があったら、とっとと飯食って寝ろよ。夜が明ければ雨もおさまってるだろうし、探しに行けるだろ。明日の朝、体力なくて起きれなくても連れていかねえからな」
「竜……」
「つか、お前食いもんで遊ぶなよ」
竜は、ガキか、と先ほどの由貴の焼きそばをぐるぐるかき混ぜていた行動を淡々と突っ込んだ。由貴は竜の言葉に驚いているのか目を丸くしていた。
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