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車が砂利の上を走って、一軒の大きな家の前で止まった。
運転席から清治が降りると、その後に続いて由貴と竜が荷物を抱えて降りた。
木造の家は所々もとの色と変わっている場所があり、歴史を感じさせていた。家の周りには古い自転車が二台と、小さな花壇がある。花壇には沢山の向日葵が少し萎れて首をもたげていた。
「ここが親父の家か……」
由貴は家の前に立って見上げると、小さな声で呟いた。
竜はその由貴の後ろで、由貴を見ながら肩からずり落ちてくる鞄を抱えなおした。
「由貴君に、藤嶋君。早く入っておいで」
「今行きます」
すでに家に入っていた清治が玄関から顔を覗かせて声をかけると、由貴がそちらを向いて返事をした。
由貴が地面に置いていた鞄を抱えて、玄関へ向かおうとしたとき隣から視線を感じて、横を向くと竜がなんとも言えない顔で由貴を見ていた。
「……なんだよ」
「いや、お前が敬語使ってんのが……気色悪い」
「気色悪いとはなんだ! しっつれいしちゃうわ!」
「…………」
「だからー! スルーすんなって!」
しなを作って竜をみてくる由貴に、竜は蔑んだような目を向けると何も言わずに荷物を抱えて玄関へと向かって行った。
置いていかれた由貴は最近竜が最後までつっこんでくれないことの不満をブツブツと言いながらその後を追った。
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