36皿目 もう離さない!

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 7月31日。  由貴と竜が村に来て一週間が経とうとしていた。 「裕斗ーー!! いるなら返事しろーー!!」  まだ日が昇りきっていない早朝。昨日の天候の面影さえもない空が由貴と竜の頭上に広がっていた。  裕斗を探すために、朝食も食べずに家を出てきた由貴と竜の二人は、昨日探した村中をもう一度歩き回った。  すでに起きていた村の人間に尋ねてみたが、誰一人としていい返事をしてきたものはいなかった。由貴は視線を辺りに巡らせながら、近所迷惑もなんのその、声を張り上げて裕斗の名前を呼んでいた。  由貴の少し後ろを歩いていた竜は、右手の甲を口元にあてて起きてから何度目かの欠伸をすると、目を細めた。  さすがに探しに行くと言ったものの、低血圧に勝つことができるはずもなく、竜はいつも以上に気だるそうな顔をしていた。 「いねえな……家に帰ってきたって話もねえし……」  小さく溜息をつくと由貴は右手で髪をかき混ぜた。  由貴と竜の二人は早朝からこうしていなくなった裕斗を探しているが、本心では自分達が見つけることなく、なんでもなかったともう一度笑顔で会うことを願っていた。 「あと探してねえのは……」 「森だけだな」  竜は立ち止まると、木々が鬱蒼と茂る森に視線を向けた。昨日の夜、探索を諦めて家に帰った場所。いくら昨日よりも天気がよく、明るいといっても都会育ちの自然を知らない由貴や竜だけで森に入ってしまえば、祭りの日の二の舞になりかねない。  竜は視線を森の入り口から、由貴へと向けた。
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