36皿目 もう離さない!

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「ちょ、おい、竜!」 「少しだけならいいだろ。なんで来れないんだって聞かれて、裕斗や卓也達のことがあいつらに知られたら、それこそめんどくさいことになるんじゃねえの」 「確かにそうだけど……」  壱也に隆史、紀美子、亜矢の四人は卓也のことさえ知らされていなかったのだ。おそらく、誠太のことや裕斗が行方不明になっていることも知らされていないだろう。もし、そのことが四人に知られれば混乱を招きかねない。  由貴は竜の言葉に渋々納得すると、竜の後をついて広場の入り口へと向かった。 「竜……大人だな……」 「お前がガキなだけだろ」 「ガキじゃねえって、いつまでも少年の心を忘れない美青年なんですよ。僕は」 「美はねえだろ、美は。つか、それただの痛い奴じゃねえか」 「痛いって言うなよ」  由貴と竜がいつもの調子で言い合いながら、広場の入り口をくぐると丁度入り口近くにいた清治と会った。由貴は清治を見たあと、気まずそうな表情を浮かべた。 「二人とも、朝から居なかったから心配したんだよ」 「あ、すいません……あの、メシもらっていいですか」  由貴は昨日のことを引きずっているのか、いつもの覇気はなくボソボソと話すと、清治はにこりと笑って、近くにあったテントを指差した。 「あのテントの下にある机の上に余った分のお弁当置いてるから食べていいよ。あと、クーラーボックスにお茶も入ってるから自由に取ってね」 「あ、りがとうございます」  清治の言葉に由貴は礼を言うと、いそいそとテントへと向かって行った。竜はそんな由貴を一瞥した後、清治に小さく頭を下げて由貴の後を追った。  残された清治は昨日とは変わって、どこか穏やかな表情を浮かべていた。
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