36皿目 もう離さない!

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「由貴兄ちゃーん!!」 「竜兄ちゃーん!!」 「うおっ!」 「!!」  清治に教えられたテントの影に入ると、竜は机の上に置いあった弁当を二つ取り、由貴はしゃがみ込んでクーラーボックスからペットボトルを二本取り出そうとしていた。  その時、壱也と隆史が由貴の背中に、紀美子と亜矢が竜の腰元に突撃してきた。  由貴は突然の衝撃になんと踏ん張って身体を支えると振り返って、背中にしがみついて嬉しそうに笑っている壱也と隆史を見た。 「ったく、あぶないだろー」 「えへへ、ごめんなさーい」 「ごめんなさーい」  壱也と隆史は笑いながら、由貴の背中からすんなり離れた。由貴は両手にペットボトルを持ったまま、立ち上がると壱也と隆史を見下ろして、にんまりと笑った。  一方、紀美子と亜矢にしがみつかれている竜は、さすがに子供を乱暴に振り払うことができず、両手に弁当を持ったまま不機嫌そうな表情で二人を見下ろした。紀美子と亜矢の二人は、嬉しそうに笑いながら竜の腰元にしがみついている。 「離れろよ」 「やだー! 離れない!」 「竜兄ちゃんなんかいい匂いするー」  にこにこと笑いながら、しがみついて見上げてくる紀美子と亜矢に竜は心底めんどくさそうに溜息をついた。そんな竜の様子を見ていた由貴が、ぽつりと呟く。 「ドラゴンフェロモンは幼女にも効果的……」 「なんか言ったか」 「いえ、僕は何も言ってません」
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