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二人は玄関の扉を開けて中に入ると、部屋の中は薄暗く、太陽が照り付けて眩しいほどの明るさの外と比べると、どこか寂しい雰囲気を纏っていた。
「お邪魔しまーす……」
靴を脱いで、玄関を上がる。
歩くたびにギシギシと音を鳴らす廊下を由貴と竜は家の中を見渡しながらゆっくりと歩く。
家の中は由貴と竜の歩く音と、大合唱をする蝉の鳴き声以外聞こえてこない。
「な、なんかホラー映画とかにありそうだよな、こういう家」
「いや、父親の実家を幽霊屋敷扱いすんなよ」
少しびくびくしている由貴を竜は呆れたような顔で見ていると、前の部屋の襖が開き、清治が出てきた。
「あ、こっちだよ」
おいでおいで、と手招きする清治いる部屋に由貴と竜が入ると、広めの部屋に畳みが敷かれ、中央には丸いちゃぶ台が置かれていた。
古びた戸棚など、昔の映画にありそうな風景の中に、ぽつんと置かれた最新型のテレビの存在がその中で浮いていた。
「楽にしてていいよ」
「あ、はい」
部屋の中で立ち尽くしている由貴と竜に清治が座るように促すと、二人は荷物を肩から降ろして、床に座った。
きょろきょろと部屋の中を見渡している二人に清治が座布団を渡し、由貴と竜はその上に座った。
すると、部屋の奥の襖が開き、一人の60歳ほどの女が部屋に入ってきた。
手にはグラスが4つのったお盆を持ち、ゆっくりと由貴たちの元にやって来ると、お盆からグラスをちゃぶ台の上に移し、由貴を見てにこりと笑った。
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