38皿目 かわいいこ

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「壱也と隆史、そっち持ちな。気をつけろよー」 「うん!」 「お、重いよ……」  テントから離れて、広場の中央に来た由貴は壱也と隆史と一緒に祭りの片づけを手伝っていた。解体されたやぐらの部品を運んでいく。由貴が片方を持ち、壱也と隆史がその反対を持ち上げる。  由貴にしてみればさほど重くはないが、壱也と隆史からすると重たく感じるのか、二人は顔をしかめて必死に木材を持ち上げていた。 「い、いっちゃん、ちゃんとそっちもってよ!」 「もってるって! 隆史こそちゃんともってよ」  お互いにいい争いながら、腕に力を入れて持ち上げてる仲の良さそうな微笑ましい姿に由貴は頬を緩めた。 「喧嘩すんなって!」  明るい声をあげながら片づけをしている由貴と壱也、隆史の姿に周りの村の大人達も頬を緩めていた。  神隠しのことについては、意見が違いなんとなく気まずい雰囲気があったが、それ以外のことに関しては明るく憎めない性格の由貴は村の人々に好かれていた。 「よーし、壱也隊員に隆史隊員そのまま向こうに持ってくぞ!」 「イエッサー! ボス!」 「イエッサー!」  笑いながら由貴がそう言うと、壱也と隆史は元気よくそれに反応した。  元気な声とは反対に慎重にゆっくりと木材を集めている場所に進んでいく。
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