38皿目 かわいいこ

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「由貴兄ちゃん重いー!」 「ちょ、俺が重いみてえに言うなって!」 「あはは! 由貴兄ちゃん重いー!」 「こら! お前らふざけ」 「キャアアアアアーーーー!!」 「な、なんだ今の……?」  由貴の声を遮って突然聞こえてきた女の悲鳴に由貴と壱也、隆史は足を止めた。由貴は振り返って後ろを見ると、広場にいた大人達がある場所に向かって駆けていっている。  じっとその光景を見た後、視線を壱也達に戻した。 「……ごめんな、ちょっと見て来るわ」 「え、由貴兄ちゃん?」  由貴はゆっくりと持っていた木材をおろすと、二人の傍を離れていった。壱也と隆史は突然どこかへ行ってしまった由貴の背中をきょとんとした顔で見ていた。  人が集まっている場所へ一直線に向かっていく。その由貴の表情はどこか強張っていた。  嫌な予感がする。嫌な汗が背中を伝う。  人だかりが出来ているある場所に由貴は足を進める。その場所……プレハブ倉庫へ。 「ちょ、すいません」  広場にいた村の人々のほとんどが集まっているのか、由貴の前に多くの人がいるせいでその先で何が起こっているのかまったく見えなかった。  由貴は人だかりを掻き分けながら、その中心部へと進んでいく。
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