39皿目 取り調べドラゴン

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「…………」  裕斗を腕に抱えた由貴は、一度裕斗を床に寝かせると着ていたティシャツを脱いで、床に横たわっている裕斗にかぶせた。少しサイズの大きめのティシャツであったからか、小柄な裕斗の体はすっかり隠れてしまった。  由貴は裕斗の膝の下と背中に腕を差し込んで持ち上げると、プレハブ倉庫から出た。  その光景を後ろで黙ってみていた竜は、由貴がいなくなった後、薄暗いプレハブ倉庫の中を見渡した。  倉庫の中には、青いビニールシートやテントの部品、箒、積み上げられたダンボールといった様々なものが置かれている。  竜はゆっくりと足を進めると、裕斗がいた辺りに視線をめぐらせた。裕斗のいた位置にはいくつかダンボールが積まれており、入り口からは光が中に入ることによって、かろうじてそこに何かがあるとわかる程度であった。  ぐるりと狭いプレハブ倉庫の中を一周するように歩いた後、竜は丁度、裕斗がいた場所の対角線上にあるダンボールに視線を向けた。  他のダンボールはふたが閉まっているのに、それだけ開いている。竜はしゃがんで、ダンボールの中を覗き込むと懐中電灯が入っていた。そのうちの一本を手に取ると、竜はじっとそれを見つめる。 「卓也と誠太のときに使ってたやつか……?」  竜は右手の親指を下唇にあててそう呟くと、手に持っていた懐中電灯をダンボールの中へと戻して、プレハブ倉庫の外へと足を向けた。
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