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プレハブ倉庫の外では裕斗を抱いている由貴を中心に人が集まっていた。その場にいたほとんどの人間が突然の子供の亡骸に唖然とし、何もできずにただ立ち尽くしていた。
「由貴くん……こっちへ」
清治が由貴の前に出ると、人だかりの向こうにある青い車へと誘導した。ここで裕斗を抱いたまま立っていてもさらに混乱を招くと判断した村長が、車で来ていた清治に広場を出るように指示したのだ。おそらく、裕斗の母親がいる家につれていくのだろう。
由貴は何も言わないまま顔を俯けて、ゆっくりと清治の後をついていく。由貴が近づくと、集まっている人達は避けるように道をつくった。
清治の車の後部座席に由貴が乗り込むと、清治は村長と二、三話して、運転席に乗り込んで広場を出て行った。
残された人々は去っていく青い車を見つめた後、車が広場を出て行ったのを確認すると一気に話し始めた。
「き、狐様じゃ、まだ狐様がお怒りなんじゃ」
「これで三人……」
「でも、服を着てないなんて初めてだわ……何があったのかしら」
「これで終わりだといいんだが……」
プレハブ倉庫の入り口辺りに立っていた竜は、周りの人達の話に耳を傾けた後、近くにしゃがみ込んでいるおそらく第一発見者となったのであろう女性に声をかけた。
「大丈夫ですか」
「え、あ、な、なんとか……」
しゃがみこんでいる女性に視線を合わせるように腰をかがめると、スッと右手を差し出した。女性は一瞬戸惑ったあと、差し出された右手にまだ震える左手を重ねた。
竜は腕を引いて女性を立ち上がらせると、手を離して、女性をじっと見下ろした。
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