39皿目 取り調べドラゴン

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 おそらくその二回というのは卓也と誠太捜索時のことを言っているのであろう。  プレハブ倉庫の鍵は祭りの準備日と今日の片付けのとき以外は原則開けない。  その間に開けたのは、卓也がいなくなった28日の夜、そして、誠太がいなくなった29日の夜の二回のみ。  鍵は村長が保管している。     「…………」 「……藤嶋くん?」 「あ、はい。ありがとうございます」  右手を口元においたまま黙り込んでしまった竜に省吾が不審げな表情を浮かべると、竜は口元から手をはずして礼を言うと省吾に背を向けてその場を離れた。  竜は両手をポケットに入れたまま視線を足元へ向ける。広場の土は乾いてはいるが、平らではなく、どこかいびつな形のまま固まっていた。 「あとは時間か……」  竜はそうつぶやくと、振り返ってプレハブ倉庫へと視線を向けた。  人だかりの向こうに見えたプレハブ倉庫は屋根が錆付き、どこか寂しげな印象を与えていた。
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