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15:00。
ガタガタと揺れる車体。運転席に座った清治はバックミラー越しに後部座席に座っている由貴を見て、溜息をついた。
由貴は腕に動かなくなった裕斗を抱いたままぼんやりと下を向いていた。
車は村の中心部を離れて森の中へと進んでいく。道はかろうじて車が一台通れるほどの幅しかなく、車の両側には青々と茂った森が広がっている。
清治と由貴が乗った車の後ろをゆっくりと美里と村長の修造が乗った車がついていく。
しばらくして、一軒の家の前に停車する。
清治の車の横にもう一台が止まった。清治は後ろを振り返ると、黙り込んだ由貴に声をかけた。
「由貴くん、裕斗くんのうちについたけど……」
「…………」
清治は返事をしない由貴に眉を下げて、小さく溜息をつくと車から出て後部座席側にまわってドアを開けた。由貴がゆっくりと視線を横に向ける。
「裕斗くんは僕が抱いていくよ。裕斗くんのお母さんには僕たちが話しておくから、由貴くんはここにいなさい」
由貴は視線を下に向けたあと、腕に抱いていた裕斗の小さな身体を清治へと渡した。清治は由貴の服に包まれた裕斗の身体を抱きかかえると、辛そうに顔を歪めて、そっと車のドアを閉めた。
バタン、と小さな音をたてて車のドアが閉まると車内を静寂が包み込んだ。
何も身に付けていない由貴の背中や二の腕、項に窓から射し込む太陽の光が照りつける。由貴は下を向いたまま、眉間に皺を寄せて下唇を噛み締めて、投げ出した左手を握り締めた。
「そんな……嘘よ……いや、裕斗ーーーー!!」
女の悲痛な声が聞こえて、由貴が顔を上げるとフロントガラスの向こうに玄関に出て泣き崩れている一人の女が見えた。
その女の隣に美里がしゃがみ込んで悲痛な面持ちで背中を擦っている。その前には裕斗を抱いている清治、その横に村長の修造。
泣き崩れている女は裕斗の母親、寺林紗江子。長く柔らかそうな裕斗と同じ色素の薄い髪を乱して蹲っている。
由貴は視線をそらすと、握っていた左手をシートに打ちつけた。
「なんで、裕斗なんだよ…………」
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