40皿目 人妻とティシャツ

4/6
前へ
/248ページ
次へ
 17:30。 「それじゃ、僕たちは帰ります」 「ありがとうございました……」 「葬式等のことは、何かわからないことがあったらなんでも聞いて下さい」  玄関の外で清治が紗江子にそう言うと、紗江子は小さな声で「ありがとうございます」と呟いて頭を下げた。清治の後ろに立っていた由貴は視線を下に向けたまま黙っている。  紗江子は顔をあげると、清治の後ろにいる由貴に声をかけて赤い目を細めて小さく笑みを浮かべた。 「由貴くんもありがとう」 「いいっすよ、そんな大したことしてないし……」  由貴は眉を下げたまま、ぎこちなく笑うと首を横に振った。  それから車に乗った清治と由貴は紗江子に見送られながら裕斗の家を後にした。  由貴は後ろを向いて、小さくなっていく紗江子と裕斗の家を見た後、くしゃりと顔を辛そうに歪めた。  辺りは少しだけ太陽の光が弱まり、オレンジ色に由貴や清治を染めていた。  助手席に座った落ち込んでいる由貴を清治は横目で見た後、小さく溜息をついた。村に来てからいつも笑顔を浮かべて、ふざけて笑っていた由貴がここまで落ち込んでいてどうしたらいいかわからないのだろう。結局家につくまで黙り込んだまま、何かを考えるようにじっと前を見ていた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4384人が本棚に入れています
本棚に追加