41皿目 ご利用は計画的に

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 居間にはカチャカチャと食器と箸があたる音とつけっぱなしのテレビから流れてくる音が響いていた。  隆子はお茶碗を持って、箸でご飯を口へと運びながら黙り込んでもそもそと口を動かしている由貴を心配そうに見つめた。清治も気まずそうな表情を浮かべて、黙り込んだ由貴を見た後、竜へと向けた。  竜は自分の前に置かれた焼き魚を箸で器用にほぐしながら、ぼんやりと手元を見ていた。ふと、竜は清治から向けられる視線を感じて顔をあげると、口を開いた。 「……なんですか」 「え、ああ、ごめんね。上手に食べるなーと思ってね」 「普通っすよ」  清治が小さく笑いながらそう言うと、竜は子供扱いされたような気がして少しだけ不機嫌そうに答えた。  その声に竜の隣に座っていた由貴は自分の皿と竜の皿を比べて、顔をしかめた。骨なのか身なのか、それとも皮なのか。ぐちゃぐちゃに解体された魚が由貴の皿の上に広がっていた。それに気付いた竜も由貴を見て、呆れたように溜息をついた。 「そういえば、二人ともいつ帰るんだい?」 「え、ああ。確か……いつだっけ?」  そんな二人の様子を見ていた隆子は柔らかく微笑みながら由貴に声をかけると、由貴はすぐに答えようとしたが、口を噤んで何かを考えるように上を見た後、隣の竜を見た。  竜はそんな由貴に呆れたような表情を浮かべながら、口を開いた。 「明日だろ」 「そうそう、明日……って、ええ!? 明日!?」  由貴は竜の返事に頷きながら隆子に言ったあと、目を丸くして勢いよく竜に詰め寄った。竜は心底うざったそうな顔をしながら、由貴の頭を叩いた。
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