41皿目 ご利用は計画的に

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「うるせえよ、いちいち騒ぐな」 「いてえ……だって……え、マジで明日だっけ?」 「8月2日が登校日だからそれまでにお前が帰るっつったんじゃねえか」  竜はそういうとカレンダーを指さした。由貴はカレンダーに視線を向けると、確かに明日は8月1日。すっかり忘れていたらしい事実に由貴はパチパチと何度も瞬きをした。 「本当に明日に帰るのかい?」 「え、あ、うん、そうみたい。すっかり忘れてたけど……ってか、竜、もっと早く言えよ!」 「つか、覚えとけよ」 「ご、ごもっとも」  冷たく言い放たれた由貴は寂しそうな表情を浮かべている隆子に視線を向けた。 「由貴、それなら……」 「また! ……遊びに来るよ、ばあちゃん」 「…………」  何かを言おうとした隆子の言葉を遮って由貴は明るくそう言った。竜は横目で由貴を一瞥した後、また視線を手元に戻して箸でつまんだ魚の身を口に運んだ。 「なあ、竜」 「なんだよ」  バタン、と部屋のドアを閉めた竜に由貴は部屋に敷かれた布団の上に寝転がって見上げながら声をかけた。  風呂からあがってきたばっかりの竜は、水分を含んで額や項に張り付いた髪をタオルで拭きながら自分の布団の上に座って、布団の上に置いていた携帯に充電器を挿し込んだ。  由貴はごろんと寝返りをうってうつ伏せになると、頭にタオルを置いているせいで表情が見えない竜を見上げながら口を開いた。 「なあ、マジで明日帰んの?」 「マジも何もお前が最初に言ったんだろ」 「そうだけどさー……」  由貴は顎の下に腕を置くと唇を尖らせて呟いた。竜は手元の携帯から由貴に視線を向けると、右手でタオルを持って髪を拭きながら呆れた表情を浮かべた。
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