41皿目 ご利用は計画的に

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「なんか、モヤモヤしたまんまで帰るってさー…納得いかねえっつーか、なんつーか……」  そう言った由貴に竜が何かを言おうと口を開いたとき、竜の黒い携帯が震え始めた。手の中でマナーモードの音は吸収されて聞こえないが、チカチカとメールの受信を知らせる光が点滅した。  竜は携帯に視線を戻して、二つ折りの携帯を開いて親指で操作した。 「誰ー?」 「健太」 「なんだ、健太かよー。健太のケはKYのケー……で、なんて?」 「いつ帰んのかって」 「おお、なんてタイムリー」  竜はカチカチと親指で操作して健太にメールを返すと、充電器がついたままの携帯を布団の上に投げて、止めていた手を動かして髪の水気をタオルで拭った。由貴は竜の携帯を見たあと、視線を竜に移した。 「なんて返したんだよ?」 「明日帰る」 「むー……」  竜のそっけない言葉に由貴は顔をしかめてしばらく黙り込んだ後、勢いよく起き上がった。 「竜はいいのかよ!」 「何が」 「何がって……裕斗のこととか、卓也とか誠太のことだって……このまま帰っていいのかよ」  真剣な表情で見てくる由貴を竜は一瞥した後、手に持っていたタオルを首にかけた。  のそりと布団の上を移動すると、二人の布団の間に置いてあった扇風機の首を自分の方へと向けた。まだ少し水気を含んでいるせいで少し色を濃くしたブラウンの髪が揺れる。
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