41皿目 ご利用は計画的に

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「シカトですかー」 「……じゃあ、聞くけど」 「なんだよー」  竜が視線を由貴に向けて口を開くと、由貴は胡坐をかいて竜に向き直った。 「お前はいつまでここに居たら納得できんの?」 「え……それは……」  由貴は竜の言葉に目を丸くした後、眉を顰めて視線を下に向けて唇を尖らせた。竜はそんな由貴の様子に溜息をつくと、また視線を扇風機の方へと向けた。 「お前が裕斗の家に言ってる間、それなりに気になったこと調べてみたけど……あと一歩がわかんねえ」 「あと一歩?」  竜の言葉に由貴は視線をあげて竜を見ると、竜は眉間に皺を寄せてじっと目の前にある扇風機を睨むように見ている。少し乾き始めた前髪がふわりと風で持ち上がる。網戸にしている窓の外から小さな虫の声が聞こえてくる。 「あのプレハブ倉庫は祭りの準備が終わった後から鍵がかけられていた。鍵が開いたのは、卓也がいなくなった28日の夜と誠太がいなくなった29日の夜の二回。裕斗がいなくなったのは、29日の朝飯を食って母親が出かけてから」 「……ってことは、裕斗がプレハブの中に入れられたのは……29日の夜?」  竜の話を聞いた後、由貴がそう言うと、竜は視線を前に向けたまま小さく首を横に振った。 「それはねえよ。あの日、その場にいた奴の話だと何人かでプレハブに懐中電灯を取りに行って懐中電灯を取ったあと、すぐに鍵を閉めたっつってた。仕舞いに行くときも同じ。プレハブの鍵は村長が保管してるらしいけど、無くなったって話もねえし」 「じゃあ、村長が……」 「それもねえよ。祭りの間中、村長は大抵誰かといた。一人で出かけて裕斗を家から攫って殺した後、ばれずにプレハブに置くのは無理だろ。つうか、それをする意味もわかんねえし、30日の朝には裕斗の捜索が始まってたんだ。多分、裕斗がプレハブに入れられたのは29日」 「でも、29日は無理なんだろ……祭り当日だし……てか、何がどこがあと一歩なんだよー。全然わかんねえじゃん」  由貴は右手で短い髪をかき混ぜながら竜を見ると、竜は右手の親指で下唇をいじりながらじっと前を見ていた。  由貴はごろんと横に倒れると、竜を見上げて口を開く。
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