42皿目 今夜は帰さない

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「おはようゴザイマス……」 「おはよう……って、あれ、藤嶋くん? 早いね」  ジャージからジーンズと黒のポロシャツに着替えた竜が顔を洗いに一階の洗面台へ向かうと、先に起きていた清治が丁度顔を洗い終わったところだった。  竜が声をかけると清治は少し驚いたような顔をした後、竜に笑いかけた。  竜は清治にタオルをかりると、タオルを首にかけて洗面台の前に立ち、腰をかがめて何度か顔を洗った。ボタボタと濡れた前髪や顔から落ちる水滴を気にすることなく、顔を上げて水を止めると首にかけていたタオルで顔を拭いた。 「今日で藤嶋くんや由貴くんと別れるとなると、なんだか寂しくなるね」 「…………」  洗面台の隣にある洗濯機の前に立って、洗剤を入れながらそう言った清治の方へと竜は視線を向けた。清治は洗剤を床に置くと、パタンと洗濯機の蓋を閉めてスイッチを入れた。ゴウンゴウンと洗濯機が機械音を鳴らしながら動き始める。 「何時のバスで帰るの? って、いっても二便しかないんだけどね」 「とりあえず、14時のバスで帰るつもりです。9時までに由貴のやつ用意できそうにねえし」 「そう……」  竜はそう言いながら、洗面台に置いていた自分の歯ブラシを手にとって歯磨き粉を搾り出す。清治はその様子を見た後、少し笑って竜の頭を指さした。 「それにしても、すごい寝癖だね。普段からあちこち跳ねてたけど」 「……クセ毛なんで」  少し不機嫌そうな声を出すと、竜は歯ブラシを持っていない左手で盛大に跳ねている髪を撫で付けた。その様子に清治は頬を緩めて笑った。
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