42皿目 今夜は帰さない

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 12:00。 「竜ー、おい、竜ってば!」 「……んだよ……」  居間から二階の部屋に戻った後、早朝に起されたせいで沸き起こった眠気に襲われた竜はさっさと帰る用意をすませ、畳の上に横になって寝ていた。  準備も終えて、暇なため持ってきていたゲームで遊んでいた由貴もいい加減飽きたのか、竜を起した。竜の顔には前髪がかかっていて表情は見えないが、声がかなり不機嫌なことから表情も大方予想がつく。 「もう12時だよー。竜、寝すぎだから!」 「……お前のせいだろ」 「へ? 俺? あー、俺の愛らしい寝顔見つめてたら寝られなかったとか? もう、やだー! どんだけー!」 「……今なら手を使わずに人を殺せる気がする……」  由貴のテンション高い返しに竜はのそりと起き上がりながら、低い声で呟いた。寝癖は直っているが、ぴょこぴょこと跳ねた毛先で目元が隠れていた。 「もう用意できたのかよ」 「さすがにもう終わってますよー。俺ってーマジ超エラくねえ?」 「ハイハイ、エライエライ」 「流すなよ!!」  面倒くさそうに返事を返す竜に由貴がつっかかっていく。竜はその様子に心底鬱陶しそうな表情を浮かべて由貴を見た後、俯いて欠伸をした。  由貴は竜が右手で襟足辺りをかき混ぜて眠そうな表情を浮かべているのを見た後、なあ、と声をかけた。
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