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16:30。
「んー、乗ってるだけってのも疲れるー……」
バスが駅へと到着すると、由貴と竜は荷物を肩へかけて外に出た。外は由貴や竜が住んでいる町の駅とまではいかないが、それなりに賑やかで村の雰囲気とは随分違っていた。コンビニのようでコンビニではない店や少し鄙びた喫茶店。
由貴は肩に鞄を掛けなおして、手を伸ばして伸びをした。その少し後ろに立っていた竜は気だるそうな表情を浮かべて欠伸をしていた。
「なあ、竜。電車の時間っていつ?」
「確か、5時」
「あと30分かー……切符とか買ってたらすぐ経つよな」
竜は昨日携帯で調べた乗り換えの時間を由貴に伝えると、由貴は駅前にあった古びた時計台を見上げて右手で首をかいた。それから由貴と竜の二人は駅の改札近くにある窓口へと向かった。
「すいませーん」
由貴は窓口の前に立つと、少し腰をかがめて中を覗きこむようにして向こう側にいる駅員に声をかけた。竜はその後ろに立ってぼんやりとそれを眺めている。由貴に声をかけられた駅員が二人の元へと近づいてきた。
「あの、東京までの切符買いたいんですけど」
「当日券ですか?」
「あ、はい。片道で二人分お願いします」
「少々お待ちください」
駅員はそばに置いてあったパソコンのキーボードに手を置くと、由貴が言った切符の発行手続きを行った。パチパチというキーボードを指が叩く音がその場に響く。
駅の中には駅員、由貴、竜、売店のおばさん、その他に数人の人間がいるだけであった。
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