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「……4日前にも同じことがあったんですか?」
「ああ、そうだよ。確か同じくらいの時間でね……ここいらじゃあまり見ない若い別嬪な人だったからよく覚えてるよ」
竜は右手を口元に当てて、目を伏せた後、もう一度女に視線を向けた。
「その人ってどんな人だったか詳しく教えてもらえませんか?」
「……竜?」
突然、興味を示しだした竜に由貴が戸惑っていると、その様子に売店の女も不審に思ったのか怪訝な目で竜を見た。
「……どうしてそんなこと聞くんだい?」
その女の様子に竜は一瞬眉を顰めた後、顔を伏せて黙り込んだ。そんな竜の不審な様子に由貴と売店の女が戸惑っていると、竜はゆっくり顔を上げた。その表情は眉を下げて、たいそう悲しげなものであった。
「……その女の人、僕の姉かもしれないんです」
「お姉さん?」
「…………」
まるで捨てられた子犬のような目でその女を見る竜。
悲しげな美青年に少し頬を染める売店の女。竜の様子と「僕」発言に固まる由貴。
あまりの衝撃的な光景に唖然とする由貴を放置したまま、竜はその態度を崩さないまま少し悲しげに目を伏せて話を続けた。
「姉は四日前に、父と喧嘩をして家を出て行ってしまったんです……だから、僕……姉を探すために、こうして村を出てきたんです……」
普段の竜からは想像付かない弱弱しい態度に由貴は顔を引き攣らせていた。売店の女はすっかり竜の様子に信じ込んでるように、じっと竜を見ていた。竜は視線を上げると、すがるような目をして女を見た。
「少しでもいいんです……その女性のことを教えてもらえませんか?」
「……そういうことなら協力するよ!」
「ありがとうございます」
笑顔を浮かべて礼を言う竜を見て売店の女は頬を染め、由貴は目を丸くして竜を見ていた。竜は由貴の様子を横目で見た後、健気な弟を演じたまま売店の女と話を進めていく。
由貴は思った。
……こいつ誰?
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