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駅を出た由貴と竜の二人は肩から大きな鞄を掛けたまま駅の周辺を見渡した。
駅の前には2台のタクシーが止まっているが、さすがに村までタクシーで戻るわけにはいかない。由貴は右手で短い髪をかき混ぜながら視線を辺りに巡らせた。
「バスはもうねえし……どうやって村まで戻ればいいんだよ」
由貴はそう呟いた後、隣に立っている竜を見て何かひらめいたような表情を浮かべた。由貴の視線に気付いた竜が由貴のいる方に視線を向けた。
「なんだよ」
「竜、さっきみたいに『僕、狐良津村に行きたいんです。えへ』といか言ってヒッチハイクしてきてよ」
「……テメエ、ぶっ飛ばされてえか」
「イ、イエ、失言でした」
竜の射殺さんばかりの鋭い視線に由貴は怯えると、慌てて竜から視線を逸らした。竜は鋭い視線を緩めて由貴を呆れたような表情を浮かべて見た後、両手をポケットに入れたまま駅周辺に視線を向けた。すると、竜はある一点で視線を止めた。
「…………」
「なあ、走ってったら何時間かかる……竜?」
バスで二時間以上かかった村へ走っていけるか真剣に考え出した由貴が竜に話しかけた。しかし、竜はじっと何かを見つけたまま黙ったままで、由貴はそんな竜の様子に不思議そうな表情を浮かべた。やっと由貴の声に気付いた竜が視線を由貴に移した。
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