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「じゃがいもはなあ……ゆでるもんじゃ、なくて…………あげるもんだっつてんだろ!!」
ドスッ!!
「!!」
薄暗い部屋の中に二組の布団が敷かれ、その間に扇風機が忙しなく動きながらその布団の上で寝ている者へと風を送っていた。
由貴はブツブツと言いながら、ゆっくりと手を持ち上げると竜の鳩尾に勢いよく振り下ろした。
竜はその衝撃に目を覚まし、何度か咳き込むと、鳩尾の辺りにある由貴の手を乱暴に払った。苦痛に顔を歪めながら、ごろりと横向きになると腕を振り下ろされた場所を庇うようにくの字に身体を曲げた。
「ってえ……な、んなんだよ……」
やっと痛みが治まった竜は身体を起して隣にいる由貴を睨みつけた。
当の由貴は呑気にむにゃむにゃと口を動かしながら夢の中を彷徨っている様子で、初めは少し離れた布団の上で寝ていたはずなのに竜の近くまで転がって来ていた。枕は由貴の足元に転がっており、その寝相の悪さを現していた。
突然の襲撃にすっかり目が覚めてしまった竜は、布団の上で胡坐をかき、寝癖でさらに好き放題に跳ねている髪を右手で掻き混ぜながら欠伸を噛み殺した。
ふと、竜が網戸にしている窓の外を見ると、外は夜の暗闇から青みがかった空へと変わっていた。
「……何時だ……」
布団の側に置いていた携帯電話に手を伸ばして、時間を確認する。
携帯の待受画面に写っているアナログ型の時計は丁度縦一直線に並んだところであった。
「まだ、6時かよ……」
竜はうんざりとした表情で携帯を閉じると、布団の上に携帯を投げた。
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