44皿目 お酒は20歳を越えてから

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 車が走りだし、駅が遠ざかってゆく。竜はシートにもたれて、右手の親指を下唇に当てたまま窓の外をぼんやりと眺めていた。空はゆっくりと青からオレンジへと変化していく。移り変わる風景は、どこか物悲しい印象を与えていた。 「あー、マジで省吾さんがあの場にいてくれてよかったです! 命拾いしました!」 「はは、大げさだな」 「いやいや、絶対竜ならやりかねないっすよ!」  助手席に乗った由貴は和気藹々といった様子で運転席にいる省吾と話していた。省吾は由貴の話に笑いながら視線を車についている時計へと向けて時間を確認すると、すぐにまた前を向いた。 「そういえば、今日祭りの打ち上げがあるってことは清治くんから聞いてるかい?」 「打ち上げ? いや、聞いてないです」 「せっかく村に戻るのなら参加するといいよ。毎年、うちでやるんだよ」 「いいんですか!」 「ああ、もちろん。藤嶋くんも来ないかい?」 「え、あ、はい」  突然話しを振られた竜は少し遅れたものの、肯定の返事を返した。省吾はぼんやりとしている竜をバックミラー越しに見ると、口元を緩めて笑った。 「藤嶋くんが来ると奈緒が喜びそうだな」 「娘さん竜のこと超気に入ってるみたいですからねー。父親として竜が憎いんじゃないっすか?」 「はは、確かに少し憎くはあるけど、藤嶋くんはしっかりしてそうだから奈緒を任せても安心だな」 「よかったな、竜! パパ公認じゃん!」 「…………」  竜は右手を口元から外すと、不機嫌そうな表情を浮かべて助手席と運転席の二人に視線を向けた。  その様子を由貴は振り返って見て、イヒヒと笑い、省吾はバックミラー越しに竜を見て笑った。明らかにからかわれている自分に、竜はふてくされたようにシートにもたれると視線を横に向けた。
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