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19:30。
「ホントにありがとうございました!!」
すっかり太陽は隠れ、辺りは暗くなっていた。辺りには虫の鳴き声が響いている。
斎藤の家の前に車が止まった。家からは部屋の中の明りがもれていた。車から出た由貴と竜は肩に荷物を掛けながら、運転席にいる省吾に礼を言った。省吾は二人に笑いかけると軽く右手を上げた後、岡本家を出発した。由貴と竜は黙ったまま車を見送った。
「……由貴」
「なーにー」
「駅で言ったこと忘れてねえだろうな」
「やだなー忘れるわけないっしょー」
由貴と竜はじっと前を見たまま淡々と会話を続ける。駅前で省吾に声をかける前、竜は由貴に今回起こった神隠しの事件についてわかったことを全て伝えていた。由貴は言い方こそふざけてはいるが、表情はいつになく真剣なものであった。
竜は横目で由貴を見ると、ゆっくりと振り返って斎藤の家へと足を進めた。由貴は振り返って竜の後ろ姿を見た後、ずれてきた鞄を引き上げて、深く息を吸ってゆっくりと吐き出すと竜の後を追った。
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