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「叫ばねえと聞こえねえじゃん!」
「……お前、そこのボタンなんでついてるかわかんねえ?」
「え? ピンポンダッシュ?」
「人間失格だな」
「えええ!? そこまで!?」
玄関に近づくにつれて、この一週間聞き慣れたじゃれあっている声が大きくなる。
ギシギシと音をたてながら木造の廊下を隆子と清治は進む。清治が一歩前にでて隆子を振り返って見た後、ゆっくりと玄関の鍵に手を伸ばして鍵を縦にすると扉を開けた。
「あ、清治さん! どうも6時間ぶりです!」
「突然すみません」
「え、あ、うん」
にんまりと笑いながら明るく答える由貴と何を考えてるのかわからない無表情で謝ってくる竜に清治は困惑した表情を浮かべた。清治の後ろでその様子を見ていた隆子は目を丸くしていた。
「二人とも、どうして……帰ったんじゃ……」
「ああ、実は俺この家に財布忘れちゃって! それで取りに帰ってきました」
えへへ、と業とらしく笑いながら言う由貴に清治はそれ以上何も言えずに少し呆然としていた。その様子を由貴の横で見ていた竜が口を開いた。
「ホント、突然すみません。今日、もう一泊させてもらっていいですか?」
「え、ああ! もちろんだよ、ほら上がって」
「ありがとうございます」
「ありがと! 清治さん」
由貴と竜の二人は清治の返事に礼を言うと、清治に招き入れられて家の中に入ると玄関に大きな鞄を下ろした。由貴は目の前に立っていた隆子を見ると、にんまりと笑いかけた。
「ばあちゃん、今晩世話になります!」
「あ、ああ。ゆっくりしていきなさい」
隆子は由貴を真っ直ぐ見ると、嬉しそうに頬を緩めて笑った。
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