45皿目 耳をすませば

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 車が発進して、斎藤家の敷地から出て行く。  辺りは真っ暗で、等間隔にある電柱についている外灯だけが道をぼんやりと照らしているだけだった。後部座席に座っている竜は自分の顔が写っている窓ガラスを睨み付けるようにジッと見ていた。  ぼんやりと見える風景は延々と闇に鮮やかな緑が覆われており、どこか気味の悪い印象を抱かせる。 「清治さん、祭りの打ち上げの場所って浜村さんとこの民宿ですよね?」 「ああ、そうだよ」 「打ち上げに行く前に、ちょっと寄ってもらいたいとこがあるんですけどいいですか?」 「いいよ、どこへ行きたいんだい?」  清治は前を向いたまま由貴の申し出に快く答えると、由貴は視線を下に向けて俯いたまま、口を開いた。 「裕斗の家なんすけど」 「裕斗くんの?」 「はい……俺、裕斗にこのキーホルダーやろうと思ってて、結局やれなかったから……どうしても渡したいんです」  由貴は言い終わると、ズボンのポケットに手を入れて小さな白猫の人形がついていたキーホルダーを取り出した。チリン、と小さな鈴の音が車内に響く。清治は寂しげな由貴の様子を横目で見ると、また視線を前に戻した。 「そうなんだ……それは裕斗くん、喜ぶだろうね」  優しい声で清治がそう言うと由貴は顔を上げて、清治を見て眉を下げて笑った。  竜は視線を窓の外から由貴と清治へと向けると、一つ溜息をついてからまた視線を窓の外へと戻した。
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