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「藤嶋君、なんだかしんどそうだね? やっぱり暑くて寝れなかった?」
「……大丈夫です」
結局あの後、寝れずにぼんやりと布団に転がっていた竜は元々低血圧なのもあってか不機嫌そうな顔で朝食の並ぶちゃぶ台の前に座っていた。
茶碗を渡しながら、心配そうに聞いてくる清治に竜は頷いて茶碗を受け取った。
「清治さん、竜って低血圧なんすよ。だから、朝はいっつもこんな感じですから」
「へえ、そうなんだ……」
由貴の言葉に清治は気だるそうに視線を下に向けている竜をじっと見た。
十分に睡眠をとった由貴は、食欲旺盛といった感じでちゃぶ台の上に並べられた自分の分の朝食をガツガツと平らげる。そんな由貴の様子に、隣に座っていた竜はうっすらと殺意を覚えた。
元々朝は食べない竜は、目の前に並ぶ朝食を流石にそのままにしておくのは失礼だと思ったのか、少し口にするが、やはり食欲が出ず、箸を置くとグラスに入った麦茶を飲んだ。
「ごちそーさまでした!」
「由貴は元気だねえ……藤嶋君はあれだけで足りるのかい?」
「ああ。竜は朝食べないんだ。あれでよく食べたほうだと思うよ」
由貴は隣に座っている祖母の隆子に笑いかけると、隆子はそれに優しそうに微笑み返した。その様子は、家に遊びに来た孫が本当にかわいくて仕方が無いといった様子である。
「今日はどうするんだい?」
「あー……とりあえず村を探索してみようかな、と思って」
「そうかい。それなら、玄関の側にある自転車を使うといいよ。あれは栄治と清治のものでね、まだ十分乗れるものだから」
「じゃあ、使わせてもうらうよ。ありがと、ばあちゃん」
由貴はにんまりと隆子に笑いかけると、隆子もそんな由貴を愛おしそうに眺めた。
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