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恋に恋している乙女、奈緒は運命の相手と信じて疑わない竜がやっと自分に興味を持ってくれたと勘違いすると伝票整理などそっちのけで竜に熱い視線を送っていた。竜はそんな奈緒をじっと見た後、口を開いた。
「あのさ、聞きたいことあんだけど」
「な、なんでしょう! 彼氏ならいません! フリーです!」
「あっそ。それでな……」
あっさりと奈緒の発言を流すと、竜は頬から手を外してカウンターの上で腕を組んで自分の聞きたいことだけを聞いた。
「そうですけど……それがどうかしたんですか?」
「なんでもねえよ。ありがとな」
不思議そうな表情をしている奈緒に竜は奈緒から見れば王子スマイル、由貴から見れば嘘くさい笑みを浮かべて誤魔化すと、その場を立ち去って宴会場へと向かおうとした。
奈緒は初めて見た笑みに頬を染めて名残惜しそうに竜の後ろ姿を眺めていると、ピタリと竜が足を止めて奈緒を振り返った。
「ごめん、もう一ついい?」
「な、なんですか!」
「電話番号教えて欲しいんだけど」
「わ、わたしのですか!? え、えっとですね、0906689……」
「ストップ。ちげーよ」
自分の携帯番号を唱えだした奈緒に竜は眉を顰めると、強制終了させた。あからさまに落胆の表情を浮かべる奈緒に竜は呆れたような表情を浮かべた。
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