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「……おい、そこのバカ」
「バカじゃねえし!」
奈緒から必要な情報だけ上手く聞き出した竜は祭りの打ち上げが行われている宴会場へと向かい、靴を脱いで襖を開けると、そこには久しぶりの食事、しかも豪華な料理に満面の笑みを浮かべてがっついている由貴がいた。
竜は呆れた表情で由貴の後頭部をパシンと叩くと、由貴は左手で叩かれた後頭部を撫でながら右手に持った箸を刺身へと伸ばしていた。
「何やってんだよ、お前は」
「いいじゃん! 腹が減っては戦はできぬってね! とりあえず飯食おうよー、ぶっちゃけ俺ちょう腹へってんの。ペコペコペコリンコなの」
「気味が悪い、気味が悪い」
「なぜに二回連呼!?」
すっかり料理に夢中になっている由貴に竜は呆れたような表情を浮かべたが、確かに自分も空腹を感じると由貴の近くに腰を降ろして、テーブルに並べられた料理の数々に視線を巡らせた。
「あら、藤嶋くんも来てたの?」
「ホントだわー。やだ、久しぶりねえ」
「相変わらず綺麗な顔してるわあー」
「ドウモ……」
座っていた竜の周りに集まってきたやや酒臭いおばさん集団に竜は顔を引き攣らせた。オバサン集団の勢いは止まらず、近くにあった未使用の割り箸を竜に押し付けると竜の目の前に次から次へと料理を持ってきた。
「これもおいしいわよー」
「これ、うちの畑で出来た野菜なのよー、食べてみて」
「おばさんが食べさせてあげようかー?」
「イエ、ケッコウデス」
「おお、これも食え食え」
「ありがとうございまっす! うは! ちょううめええ!」
「兄ちゃんいい食いっぷりだな、ほれ、これも美味いぞ」
オバサン集団に圧倒されている竜の隣ではオッサン集団に囲まれた由貴が自由気ままに好きなものをがっついていた。竜はそんな由貴を羨ましいと横目で見ながら、オバサンに差し出された刺身を口に運んだ。
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