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「うえ、もう食えねえ……」
明らかに食べすぎた量を胃に収めた由貴を竜は呆れたように見下ろしていた。
これ以上宴会場にいたら胃が破裂する危険性を悟った由貴と身の危険を感じた竜は宴会場を出て、廊下にいた。由貴が壁にもたれて座りこみ、竜がその前に立っていた。
宴会場は飲めや歌えやの大盛り上がりの時期も過ぎて、すっかり皆がまったりとテーブルの傍に座って話をしていた。
宴会場から聞こえてくる声に由貴と竜の二人は黙ったまま、ぼんやりと耳を傾けた後、由貴が口を開いた。
「そろそろ、名探偵の登場といきますかね、ワトソンくん」
「黙れ、アホームズ」
「あ、ちょっと上手いこと言いやがったな!」
竜の返しに由貴は、イヒヒと笑った後、ゆっくりと腰を上げて立ち上がった。竜はぼんやりとその様子を眺めている。
「よし、行きますか」
「ああ」
由貴は、にんまりと笑って右手をあげた。竜はそれに気が付くと、少し口元を吊り上げてニヤリと笑って右手をあげた。由貴は竜の手に向かって、竜は由貴の手に向かって。そのままハイタッチをする……かと思われたが、竜は由貴の右手を避けるとそのまま由貴の額を叩いた。
「いてええ! ちょ、ちょっとー! 竜! 今のは、こう、パーンって感じにハイタッチするとこじゃん!」
「うるせえ、ムカつくんだよ、お前」
「なにその理不尽!?」
ギャアギャアと文句を言っている由貴の相手をせずに無視すると、竜はさっさと宴会場の中へと入っていった。由貴も慌ててその後を追った。
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