48皿目 コンビ芸

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 宴会場の中に入ると、ほとんどの村の大人達がぐだぐだとテーブルの傍に座っていた。  竜と由貴はそれを見下ろしながら、前にあるカラオケ用のステージへと足を進めていく。何人かが竜と由貴の二人が歌うのかと面白そうな視線を向けてきていた。 「あー、あー、マイクテスト、マイクテストー」  ステージの上に立った由貴が置いてあったマイクを手にとって、そう言うと宴会場にいたほとんどの村の大人達がステージ近くにいる竜とステージの上にいる由貴に視線を向けた。  マイクを握った由貴は注目を浴びていることに、にんまりと笑うとピシッ!と左手をあげた。 「どもども皆様こんばんはーー!」  由貴が若手芸人ばりに張った声でそう呼びかけると、大人達は一瞬きょとんとした表情を見せたあと、何か余興が始まるとでも思ったのか皆が楽しそうに拍手をしたり、由貴に声援を送ったりした。竜はステージの近くで呆れたような表情を浮かべていた。 「皆さーん、お祭りお疲れ様でした! えー、ボクラは大したことやってないんですけども、来ちゃいました!」 「十分手伝ってくれたよー」 「マジすか! アリーッス!」  答えてくれた壱也の父親、拓郎に由貴は満面の笑みを浮かべた後、頭を下げた。にこにこと笑ってステージに立っている由貴を村の人々は笑みを浮かべて見上げていた。由貴はステージ近くにいた竜と一瞬視線を合わせて、小さく頷いた。
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