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「犯人なんかいない。あれは『狐様の神隠し』だ。でたらめ言うんじゃない」
「でたらめなんか言ってねえよ! 話を聞いてもないくせに決め付けんな!」
ステージ近くに座っていた村長が冷めた声で言うと、由貴は村長へと視線を向けて声を荒げた。村長はその気迫に一瞬たじろいだが、ここで引くことはできないと強気な視線を由貴と竜に向けた。
「……所詮、子供の戯言だろう」
「戯言かどうかは聞いてから決めてクダサイ」
村長の言葉に竜はあっさりと何の感情も篭っていない淡々とした返事を返した。右手であちこち跳ねている明るい色の髪をかき混ぜると、竜は一つ溜息をついてから口を開いた。
「あんたらが『狐様の神隠し』の一言で片付けていた卓也、誠太を殺したところまでは、村の人間全員に犯人の可能性があった」
竜の淡々とした声が静まり返った宴会場に響き渡った。隣に立っている由貴は横目で竜を一瞥した後、視線を下に向けてじっと足元を見ていた。
「……でも、犯人は裕斗を殺してしまったことでたった一人に絞られた……裕斗を殺して、あのプレハブ倉庫の中に入れることができるのはたった一人しかいねえ………」
竜は下に向けていた視線をゆっくりとあげると、ある人物へと向けた。村の者たちは竜の視線の先を追った後、そこにいる人物を見て目を見開き、息を飲んだ。
「犯人はあんただろ……浜村美里さん」
感情の読み取れない淡々とした声でそう言い切った瞬間、その場にいた者達が一斉ざわつきだした。竜に名前を呼ばれた美里は省吾の前に座り、ただじっと膝の上で握り締めている手を見つめていた。
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