49皿目 解答用紙

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「何を言ってるんだ! 美里がそんなことをするはずがないだろ!!」  美里の前に座っていた夫の省吾は身を乗り出して竜に反論した後、俯いて黙り込んでいる美里を一瞥した。周りにいる村の者たちはすっかり酔いが醒めたらしく、信じられないといった表情で何も言わない美里に視線を向けていた。 「まあまあ、皆さん。とりあえず竜の話を聞いて下さいな」  気まずい雰囲気に包まれた宴会場に由貴の呑気な声が響いた。視線がステージ近くにいる由貴へと集中した。由貴はヘラヘラと笑いながら近くのテーブルから烏龍茶の入ったグラスを手に取り、ステージに腰掛けた。 「ささ、続きをどうぞー」 「…………」  何を考えているのかわからない飄々とした態度で由貴はグラスに口をつけた。竜はそんな由貴の様子を横目で見た後、ゆっくりと口を開いた。集中していた視線が由貴から竜に移動した。すると、由貴は笑みを顔から消して、ジッと真剣な表情で美里を見た。 「……とりあえず、やってるかやってないかの抗議は話終わってからでいいですか」 「ああ……」  竜が冷静な声でそう言うと、身を乗り出していた省吾は上げていた腰を下ろしてその場に座った。美里は何も言わずにただ手元を見つめていた。  その様子を見ると竜は目を伏せて話を続けた。さらり、と長めの前髪が目元を隠した。 「……まず、28日。あの日、5時半に美里さんと奈緒、京一が車で広場を出て、その後6時に卓也達が広場から家に帰って行った。おそらく、美里さんは奈緒と京一をこの民宿で降ろした後、自分は車に乗ったまま卓也が見つかった森の入り口辺りで卓也が通るのを待ち伏せしていた。美里さんがどこかへ行っていたのは奈緒が見ていたから確かだろ。なあ、そうだよな?」 「え、あ、はい……」  竜は視線を上げて入り口近くに座っている奈緒を見ると、奈緒はゆっくりと首を縦に振った。
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