49皿目 解答用紙

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「……ちょっといいですか?」 「なに」  部屋の隅で竜の話を聞いていた京一が右手を軽くあげて竜に声をかけた。竜はやる気の無さそうな覇気のない声で返事をすると、京一へと視線を移した。 「裕斗くんは、確か29日の昼から行方不明だったって聞きました……29日、母さんは一日中、僕と一緒にいました。出店を出していて……それは他の人も見てます。裕斗くんが母さん以外には殺せないって、おかしくないですか」  真剣な表情で竜を真っ直ぐ見てくる京一に竜は、右手で襟足辺りを掻きながら口を開こうとすると、それまで黙っていた由貴が竜よりも早く話し始めた。 「おかしくねーよ。そもそも裕斗がいなくなったのは29日じゃねえし」 「29日じゃ、ない? ……どういうことですか?」 「紗江子さんは、本当のこと言ってなかった。本当は29日には紗江子さんはこの村にいなかった……紗江子さんが裕斗を最後に見たのは28日の午前中。これは本人から聞いたから間違いねーよ。なんで29日にいなかったんだよ、とかいう理由はこの事件に関係ねえから言いませんけど。プレイボーイの侵害ですから」 「プライバシー、な」 「そうとも言います」 「そうとしか言わねえよ」  本気なのか業となのかわからない由貴の言い間違いを竜が呆れた表情で訂正すると、由貴は、にんまりと笑ってやけに得意げに頷いた。真面目なのかふざけているのかわからない二人のやり取りに、村の人々は呆然としているとヘラヘラとしていた表情から一変して真剣な表情になった由貴が口を開いた。
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